Sommelier

ワイナリー訪問レポ① Cave Hatano

先日の東御ワイナリーツアーで訪問したカーヴ・ハタノさんでKurakake Frost Chardonnay 2021をいただいて驚いた。おいしい!
その世界は僕の知っているシャルドネとはまったく違っていた。
ワインにこんな世界があったの?!

醸造家のお名前は波多野信孝さん。どことなく気だるい雰囲気を醸し出す、優しそうなお兄さんって感じです。

その場所は標高800mほどのなだらかな南斜面の中腹にあり、曲がりくねった山道を登るとウッドデッキのコーテジや民家、もちろんあたり一面には田んぼもあればブドウ畑もあって。
少し暖かくなり始めた3月の中旬でさえも風は冷たく、夜空には月が綺麗に浮かびます。

いま長野は「信州ワインバレー構想」の名のもとに、ワイン造りにどんどん力を入れています。
塩尻市の「桔梗ヶ原ワインバレー」、松本から安曇野、大町に至る「日本アルプスワインバレー」、南信州の「天竜川ワインバレー」、そしてカーヴ・ハタノもある東信から北信までを貫く千曲川の流れに沿った「千曲川ワインバレー」の4つ。

とくにこの東御市を中心とした「千曲川ワインバレー東地区」は、8市町村が合同で広域ワイン特区を構成するなど、小規模ワイナリーの集積をめざす先駆的な地域で、カーヴ・ハタノもその中で生まれました。

波多野さんはもともと料理人だったらしく、長野に来たのも最初は料理人としてだったそう。
そこから紆余曲折あり、今ではブドウを育て、ワインを醸造する。人の人生ってわからないものですね。
ちなみに波多野さんは野菜も作っていて、近所の皆さんからすこぶる評判も良く、その野菜の美味しさは折り紙つきです。

波多野さんがなぜ料理人を辞めてワインを造っているかは僕には分からない。
でもそのおかげでこんなにおいしいワインが飲める幸せを得られました。

この日色々と飲ませていただきましたが、その中でもとくに感動したのは

Kurakake Frost Chardonnay 2021

このシャルドネの収穫日は11月10日。霜に何回か当てた、アイスワインにはいかないくらいのやや甘口です。
ほぼオーガニックで栽培されたブドウで造り、300本いかないくらいの生産量。

霜を当てるとブドウは房には栄養が入らず、今までパンパンに膨れていた実の水分が凍結し、蒸発する。そして少ししぼむ。
普通に収穫したら23.5度だったブドウを、それで少し蒸発させて26ぐらいの糖度まであげて
アルコール13%で少し糖度が残る状態で瓶詰めしているとのこと。

シャルドネで甘口ってあまり見かけたことがなく、造ったらどうなるんだろう?という発想で生まれた試験的なワインです。
糖度26ぐらいで途中で止めてるので甘みもあって、でも酸もしっかりしてて。
このまったりとした甘美な世界。それでいて上品な酸と余韻にあるみかんの皮にある苦味がアクセント。
すばらしくおいしい!とその時素直に思いました。

僕はまだ日本ワインを飲み始めて日も浅く、少しはわかってきたようなわからないような、そんな頼りない経験しか持っていないけれど、いずれにせよ、このような味わいのワインは初体験です。

おもえば僕は2020年に長野ワインの試飲会で飲んだシャルドネで、日本ワインを大好きになった。
その時は信州たかやまワイナリーのシャルドネで日本ワインの魅力をしった。
最近では北海道、余市のピノ・ノワールに心を奪われていて。
そして今また東御市のワイナリーをご紹介いただいて、じっさいに生産者の方とお会いし、お話を聞き、改めて長野ワインに魅了されています。
ついこの前までの僕は、ワインといえばブルゴーニュで、ピノ、シャルドネ、アリゴテにガメイが世界の中心だったのに。そんな自分がまるで嘘みたい。

なお、このワインはまだカーヴ・ハタノさんで直接買えるみたいです。
というか、ここにしか売ってないというのが正解です。なんせ300本ないんだもんね。

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